« 自死遺族のみで運営する分かち合いの会の傾向 | トップページ | グリーフケア・アドバイザー2級 認定講座を受講した感想 »

自死遺族として語る、X JAPAN の YOSHIKI

3月19日に放映された NEWS ZERO の ACTION を録画したものを見た。
X JAPAN の YOSHIKI が、父親の自殺について語り、自殺孤児のためのチャリティ基金を創設するための活動をしているという特集だった。


番組の中で語る YOSHIKI の顔や声、話し方は、まさに私がこれまで会ってきた自死遺族と同質だと感じた。
自死遺族の会(分かち合いの会)では、通常、参加者が一人一人、このようにして自分の体験や胸中を語る。
だから、映像を見ていると、自死遺族の会に出席しているような錯覚を覚えた。


多くの自死遺族は、普段、このような話を、人の前ではしない。
タブーだからという理由だけではなく、生理的に困難なのだ。
相手が家族であっても同じだ。
膨大な衝撃と苦しみは、その体験を再生しようとするだけで、極めて強いストレスとなる。
しかし、その体験に向き合い、整理することで、遺族の心は少しずつ安定に向かう場合が多い。
そのために、自死遺族の会が存在する。

自死遺族の会では、交互に自分のことを語るため、自分のことを語る時間と、他の遺族の話を聞く時間がある。
どちらも、遺族の心の安定、回復の役に立つとされている。
今回の NEWS ZERO の YOSHIKI の映像は、自死遺族が見た場合、遺族の会で他の遺族の話を聞くのと同様の効果があると言えるだろう。


有用な映像だと思ったので、番組の後半で、YOSHIKI が父親の死について語り始める場面以降の内容を書き取ってみた。

ナレーター
「クラブ活動から帰宅した YOSHIKI が見た光景。
 そのときの記憶は混乱し、今も整理がついていないと言う。」


YOSHIKI
「僕はたぶん器楽クラブに行ってて、学校に、夏休みだけど学校に行ってたんですよ、練習しに。
 トランペットか...何だったんだろう、楽器は覚えてないんですよね。
 で、戻って来たら、そういう状況だったっていう...うーん...
 でも、僕が思ったのは、寝てるんだー、と思ったの。
 ただ、あの、頭に三角の頭巾が着いてたから、こうやって。
 なんでだろう、って。
 それがすごいびっくりして、なんでああいうのを着けて寝てるのって聞いたのを覚えています。」


YOSHIKI
(その時の状況を聞かれて)
「怒り狂ってましたね、たぶんね。」


質問者
「ううん...怒りというのは?」


YOSHIKI
「なんかシクシク泣いてる感じじゃなかったですね。もう大暴れですね、たぶん。家の中で。うん。」


質問者
「逆に言うと何に対する怒りですか?」


YOSHIKI
「わかんないですね。なんか親戚の人たちに押さえつけられていた感じがしますもんね。
 うーん...。
 でも、自らの意志で命を絶たれたら、なんでって、クエスチョンマークが、すごい、もう、疑問符だらけになっちゃうわけじゃないですか。」


質問者
「うーん」


YOSHIKI
「で、絶対に答えが聞けない疑問、あの、答えが、ねえ、本当の答えが絶対にわからないじゃないですか。
 その答えを持って、持ったまま、どっか行っちゃったわけだから。」


質問者
「うーん」


YOSHIKI
「そしたら、永遠にその答えを探し求めて生きて行くしかないんですよね。僕なんかね。


質問者
「うーん」


ナレーター
「当時の状況に話が及ぶと」


YOSHIKI
「うーん...しゃべりたくない。...うーん...まだ...」

「しゃべりたくない」という YOSHIKI は、半ば笑っていた。
だいぶ、辛い質問だったのではないか。


放送されなかったので判らないのだが、質問者は、ちゃんと言葉を選んで質問しただろうか?
これまでの台詞から、質問者は自死遺族ではないように思う。
そんな人間を質問者にしたこと自体にも、苛立ちを感じる。


自分が、配慮のない言葉で質問されることを想像すると、辛くて、悔しくて涙がこぼれる。

ナレーター
「それ以来、家族の間で、父親のことについて、語られることは、無かったと言う。
 父親との思い出は、よく釣りに行ったこと。
 そして、ピアノを弾いてくれたこと。」


YOSHIKI
「じーんときちゃった...。
 いつもはお母さんと来るんですけど。
 はい、はい。」


ナレーター
「享年34。
 早過ぎる別れだった。
 突然の父の死。
 その事実と、これまでどう向き合ってきたのだろう?」


YOSHIKI
「(父の死について)まあ、乗り越えてはないですよ。
 常に戦いですよ、やっぱりそれは。
 うん、ねぇ。
 そう、なんか。うん...。
 こういう傷って、だからねえ、傷は、癒えない傷だと思うんですよね。
 ずうーっと。
 不思議ですよね...。」


ナレーター
「経験したものにしか解らない傷の痛みを、これまで独りで抱えてきた。」


YOSHIKI
「僕なんか、でも音楽家だったから、そういう、なんかねぇ、ぶつけるところがあるけど、
 これ、無かったら、どうするんだろうなぁとかって思いますよね。
 うん、ほんとに...ねぇ...無かったら、生きてたのかな、ぐらい思っちゃいますもんね。」

涙を流す YOSHIKI。

彼の言葉と仕草は、微塵も違わず、自死遺族だった。
私がいつも、遺族の会で見ている光景そのものだった。
遺族は、こうして、他の参加者が自分の気持ちを代弁するのを聞き、自分の心を整理する。
自分と同じなんだという、強い共感を感じ、安心を得ることができる。

ナレーター
「彼が作詞、作曲した、この Tears という曲には、亡くなった父親への思いが、込められていると言う。
 実は、今回の香港のコンサートには、親を亡くした子ども達200人が招待されていた。
 YOSHIKI にとって、初めての試みだった。
 コンサート終了後、自殺遺児や交通遺児を援助する香港のボランティア団体に、寄付が行なわれた。」


YOSHIKI
「うん、なんか人のためになることできないかな、っていう、なんて言うんですかね、
 その、父に対して同情っていうか、悲しい気持ちがあるっていうことも、そうだけど、
 そんときの僕たちの家族が味わったっていうのは、すごい、うーん...
 そうですね、そういうなんか、あの、遺された家族の人たちとか、そういうとこも考えた上で、何か力になれないかなっていう。
 特に日本は自殺が多い国なんで。
 来年やろうか、再来年やろうかとずっと考えていたことを、もう始めてしまおうと。
 まだ設立中なんで、形には、形になってきている段階なんですけど、でも、そういうように、
 設立してからじゃなくって、じゃあ、もう同時にやってっちゃおうみたいな感じで、その、チャリティみたいな、基金みたいなものを、今始めようってことで、やっています。」


ナレーター
「まだ具体的なプランは無いが、親を亡くした子ども達たちをサポートしたいという気持ちは、日に日に強くなっているという。」


YOSHIKI
「そういうチャリティをやろうと思った時に、やっぱり無理しちゃいけないなぁと思って。
 やっぱり僕、音楽家だし、ロックミュージシャンですし、まぁクラシックもやってますけど。
 別にその、派手な生活スタイル、いつも派手じゃないんですけど、
 別に、変える必要も無いし、
 それに皆が賛同してくれても良いし。
 一人だけでも良いしっていう、そんな気持ちで、なんか、うん。
 それは、なんかある種、義務じゃなくって、自分がやりたいからやるという。」


ナレーター
「ともすれば、偽善と思われるかもしれない。
 しかし、とにかく行動を始めたいと、YOSHIKI は語った。
 館山から東京に戻り、その足で向かったのは、レコーディングスタジオ。
 X JAPAN として 1 年ぶりの新曲だ。
 生きる勇気が湧いてくる。
 そんな曲にしたいという。
 誰かの力になりたいと始めた活動。
 それは、しかし、自分自身の人生とも向き合うことだった。」


まず、有名人である YOSHIKI が、公共の場で、自死遺族としての体験を語ったこと自体に、とても強い決意と意志を感じ、心を動かされた。
また、多くの遺族の言葉を代弁し、多くの視聴者に届けてくれたことに、深く感謝したい。
自死遺族でない人が、少しでも自死遺族に対して関心を持ち、その心境について理解を深め、配慮ができるようになることを、私は願う。


自殺遺児のために何かをしたいという気持ちも、痛いくらいに伝わった。
私がこれまで会った自死遺族たちの中で、他の自死遺族のために役に立ちたいという人は少なくなかったし、私自身もそう感じている。


某巨大掲示板で、YOSHIKI が基金を作ろうとしていることについて、新しく基金を作るのではなく、既存のところに寄付すればいいという意見があった。
一理あるとは思うが、彼がそうしたいのも何となく察しがつく。
自分で基金を作るのは、彼自身のグリーフワークなのだろう。
彼と父親の結びつきを感じ、前向きに行動することにより、心を安定させることができる。
有名人が行動することによる啓発効果も、YOSHIKI なら十分に期待できる。
私は、彼が基金を創設することには、遺族としての心情的にも、人々への啓発効果が見込める点からも、賛成したい。

|

« 自死遺族のみで運営する分かち合いの会の傾向 | トップページ | グリーフケア・アドバイザー2級 認定講座を受講した感想 »

2.自死遺族」カテゴリの記事

心と体」カテゴリの記事

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/96581/44443718

この記事へのトラックバック一覧です: 自死遺族として語る、X JAPAN の YOSHIKI:

« 自死遺族のみで運営する分かち合いの会の傾向 | トップページ | グリーフケア・アドバイザー2級 認定講座を受講した感想 »